裏惨 さん
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コメント:20件
作成日:2004年10月21日
以前、表題の件について話題がありましたが、
(5/20:6019、6/14:6440、6/16:6502)
回答者陣の中で意見交換したまでに留まっていたかと思います。
当時私も勉強不足でしたがあれから調べる機会がありましたので
ここにその見解を述べさせて戴きたいと思います。
識者の皆様からご意見伺えると嬉しいです。
?通知義務の有無
まず、物件の売買の場合、自殺の事実を伏せて売買契約したものが
契約の解除を認める判決が複数あり、「事前にその事実を知っていた
ならば購入しなかったであろう」と考える事が“一般的”と認められて
います。このサイトでも議論になった、それが仲介業者の説明義務の
範囲に入るかという点についても、告知しなければならない事項と
なっています。
よって、賃貸についても“心理的瑕疵”には変わりなく、同様に考えて
良いと私は思います。(売るなら通知するけど貸すなら通知義務はない
なんてのはおかしいと思うからです。)
?仲介業者の義務の優先順
ここで仲介業者には借主候補者への“告知の義務”が発生する事に
なりますが、これは既に背負っている貸主の個人情報の“守秘義務”に
優先する。(貸主の個人情報とは、例えば持ち主の妻がその物件で
自殺し、夫が貸しに出した場合など)
?損害賠償請求
自殺の事実が発覚し、借主はそれが我慢できない場合、どう訴えるか。
契約に関わる重要事項なので“契約の取消無効”を訴えます。
“無かった事にする”訳ですから敷保賃料の全額返還及び
引っ越し代等を請求します。仲介業者に対しては仲介料の返還を
請求します。場合によっては+αの損害があるかも知れません。
ここで相談者の中には怒りをぶつけて「慰謝料を」「賃料を下げて
もらえないか」等の要求ができないものかという問い合わせ等
あるかと思いますが、それはできない相談だと考えます。
“とても住んではいられない”から契約を無効にするのであって、
慰謝料をもらったり、賃料減額されれば“住める”のであれば、
最初から問題ないのと同じだからです。
よって、これらは賃料交渉に過ぎず、であれば貸主に対して強制力は
ないと考えます。
以上は善意の借主の話ですが、貸主も被害者です。
被害者は物件の資産価値を下げられた(借り手がつかない、もしくは
賃料等の条件が不利になる)ので、自殺者の家族もしくは保証人に
損害賠償請求ができます。
?自殺場所について
建物外で自殺が行われた場合。
・一戸建ての敷地内の物置での自殺があった場合、建物内でのそれと
同様に判断されています。
・服毒し、病院に運ばれて4日後に死亡しても同様です。
・家から2、300?離れた林の中で首吊りしてた場合は認められません
でした。(自殺事実の告知義務はない)
但し、都会でならいざ知らず、田舎の一戸建てであれば、隣地との
境界が広いので“そこで自殺があった”の内に入りますし、
また、近隣の主婦達の噂話が絶えないとかであれば、感覚としては
“敷地内”と同様に見られるようです。
・建物内で行われ、取り壊されて土地が売買された例でも“空間的に
一体”と見なされています。
但し、その更地に新たに建物が立て直された場合、契約無効の訴えは
退けられています。
よって、敷地内は当然として、敷地外では明確な物理的線引きはない
ようですが、関連性の中で、いわば“そこで自殺があった”の
“そこ”に含まれるならば、自殺物件として告知義務があるようです。
以前の相談の投稿の例は、「マンションの部屋の前の廊下」で、かつ、
同僚に「なんでそこにしたんだ?」と言われていますので関連性は深く、
該当するものと思われます。
?通知義務期間(時効?)
場所の問題よりもこちらの方が難しそうです。一般的には、
・入居者が2代交代した時
・5年経過した時
などと言われている節がありますが、判例では7年経過していても
通知義務を引きずっているものがあります。
これは、“そういう事実は時間と共に風化するもの”と捉えられて
いるようで、場所の関連性と同様、近隣の意識の風化にかかっており、
客観的な数値で表わす事は無理だと思います。
例えば、1ヶ月毎に入居者が幽霊騒ぎで逃げ出したのであれば、例え
5代入れ替わってもダメでしょう。
では、一刻も早く脱却したいが告知しておかないと後々訴えられ
かねない貸主及び仲介業者はどうすれば良いのか、ですが、一応上記の
いわゆる“一般的”な基準を意識しつつも協会や行政の指導を仰ぎ、
できるだけ厳しい基準で(告知期間を長く)見ておいた方が無難なの
ではないかと考えます。「こちらの一存や思惑で決めた(隠した)の
ではない」事を客観的に見てもらうための努力です。
2代交代というのも、“平穏無事に時が過ぎた”ということの証拠の
ひとつになるからだと思います。
住居用の賃貸借契約の期間がだいたい2〜3年スパンですから、「5年
経過」というのも丁度当てはまるものでしょう。
以上